365日の図書館

読書メーターに記録している読んだ本が365冊になるので、

何かしたいなあと思って、月ごとに好きな本をまとめようと思い立ちました。

月のイメージは、絶対にこれ、っていう本と、

この本紹介したいから、この月っぽいということにしとこ、くらいの本とあります。

 

■1月 むこう岸 安田夏菜

生活保護は、施しをタダで受けてることじゃない、投資されているんだ」

これは心にとどめておきたいし、人々に知らしめたい言葉だと思いました。

恵まれた家庭に育ち、中学受験をしたような山之内と、

貧乏ですべてを一人で抱え込もうとする樹希が、

互いに干渉し化学反応を起こす物語です。

 

■2月 猫を抱いて象と泳ぐ 小川洋子

リトル・アリョーヒンのチェスに対する態度で、

私も学問に臨むのがよいだろう、と後になって思いました。

読んでいるときは、静謐な世界観、感性の光る表現に、

ただただうっとりしていました。

 

■3月 暗い夜、星を数えて 彩瀬まる

東日本大震災の時に、福島の電車の中で被災した彩瀬さんのエッセイ。

震災について、自分のことのように寄り添って考えさせられるきっかけとなった本です。

それまでも、いくつかの記事で、震災について知ろうとしていたつもりだったけれど、

福島に対する認識がずれていたことを知らされました。

福島の人が、おすそわけするのに気を遣うこと、

信頼できる知人からのおすそわけでも無条件には口にできないこと。

様々な人の視点、そして、一人の人の中でも複雑な感情が混在していること。

 

■4月 うたうとは小さないのちひろいあげ 村上しいこ

この本をきっかけに、短歌に興味を持ちました。

平安時代の短歌もいいけれど、現代短歌を味わうのは楽しい。

しかしそれ以上に、この本を読んだ直後、どんな文の形でもいいから、

私の見たこと聞いたこと感じたことを、すべて文にしたい言語化したい、

という気持ちがむくむくと湧き出てきました。

 

■5月 葉桜 橋本紡

あんなに感性が豊かで、それを表現できる人々の中で暮らせたら、どんなに幸せだろうか。

この本を読むと、背筋が伸びます。

少しだけ、丁寧に暮らしてみようかな、という気持ちになります。

大好きな本の一つです。

 

■6月 人間タワー 朝比奈あすか

人間タワーをめぐって、各視点から描かれた文章。

とりわけ、小学生の気持ち、先生の気持ちがよく書かれていたように感じます。

こんな子、各学年に1人はいるだろうな、みたいな。

最近、ネットでしばしば上がるような話題がテーマで、

新たな知見を得られたか、は微妙なところですが、

一文筆家の手で書かれた物語であることは大事なことだと思います。

 

■7月 夜市 恒川光太郎

始めて読む物語でした。すごい・・・という感想を抱きました。

私におすすめしてくれた友だちの表現を借りると、ジャンルは和風ホラーです。

これはおすすめしたい気持ちがよく分かるので、

読んだことのない人は、ぜひ手に取って、

すごい・・・という感覚を感じて欲しいです。

 

■8月 世界の果てのこどもたち 中脇初枝

いろいろな出自・思想の人が交わりあって暮らしていて、

心の通う知人(友人or親類)になってしまえば、出自なんて気にならなくなるのに、

なぜ国対国、民族対民族というスケールでは、自分と違う人間は敵意の対象になってしまうのだろう。

戦後の中国・日本・韓国それぞれの市民は、

どうして皆が望む平和な方向へまっすぐ進むことができないのだろう。

戦時中から戦後を生活している市民の気持ちに寄り添った話を読むのは初めてだったので、

新しく知ることがたくさんありました。

 

■9月 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 桜庭一樹

藻屑が転校してきたのが9月らしいので9月の本。

狂っていて、同情しきれなくて、でも読んでいてつらい気持ちになりました。

「好きって絶望だよね」というせりふが、

いつまでもいつまでも頭の中に残っています。

 

■10月 誰かが足りない 宮下奈都

10月の本といえば、これしかないです。

10月31日にハライに集うことになる人々の短編集。

ちょっと寂しげで、でも最後にはどこか幸せな気分になれる。

私は、偶然この本を10月の真ん中に読んだのですが、

ひきこもりの兄が、久しぶりに窓を開けて、

風の冷たさと空の青さに「今って10月?」って尋ねたところは、

ほんとうにぞくぞくとしました。

 

■11月 骨を彩る 彩瀬まる

銀杏並木を見るとこの本を思い出します。

一番好きで、おすすめしたい本です。

「死者にまつわる風景を無意識に飴玉にする癖があるのだ」

というところを初めとし、いくつものハッとさせられる場面がありました。

自分とは違う当たり前を持った人のことを、すんなりと受け入れるのは難しいし、

引っかかりをもってしまうのもまた仕方ないことであり、

なんと言えばよいか折り合いをつけるのが大切なことだと思いました。

 

■12月 すべて真夜中の恋人たち 川上未映子

誕生日に真夜中の街を散歩すること、という考えに惹かれて、

私も去年の誕生日の真夜中に散歩をしました。

主人公の冬子さんが12月生まれだった気がしてるけれど、

自分の誕生日が12月なことと混同して記憶してる可能性があってご了承ください。

冬子さんの鬱っぽいところが、自分と重なって、

同族嫌悪な気持ちになって、

決して幸せな感覚ではなかったけれど、

きっと読んでよかった本の一つです。

 

こうやって並べてみると、好きな本12冊とか、おすすめの本12冊とは、

きっと違うラインナップができて、自分でもびっくりしました。

けれど、もちろん良い本ばかりなので、気になった本を手に取ってもらえたら幸いです。